Story ストーリー

ビキニ冒険記

エピソード4:世界を救うための法律

君たちは酒場で頭のおかしな魔術師にからまれて、大事な鎧を溶かされてしまった。
羞恥のあまり宿屋に飛び込んだ君たちだったが、朝になっても状況は変わっていなかった。
もう1泊する路銀も残っていない君たちは、あてもなく街をさまよい歩いていた。

「ああ、昨日はひどい目にあった」
「ふふ。しかしおかげで昨夜はファイターと裸の付き合いができたわね」
「誤解されるようなこというな!」
「まあちょうどよかったじゃない。町の防具店であたらしい装備を整えましょう」
「あ~、それで相談なんだけどさぁ。昨日の宿代が二人分金貨10枚立て替えたら、残りが薬草代くらいしかなくて…。ちょっと貸してもらえないかなぁ?」
「ないわよ」
「えっ」
「わたくし、現金は持たない主義なの」
「キリッとしていうことですか」

*************************

「お金がないのに装備は溶けてしまうなんて、ゼロどころかマイナススタートの冒険なんてありなの?」
「ファイター、案ずることはないわ。あの柵の奥を見て!」
「ああ、なぜか宝箱が置いてあるね」
「えぇ。あの中には財物が入っているかもしれないわ」
「そりゃ、入ってるかもしれないけど、あたしたちのものじゃないからね」
「世界救済者特別措置法」
「なんですか、それ」
「世界を救う任務を国家より任じられた者は、町の宝箱やタンス、木箱などの中に入っている有用なものを民間から接収してよい、という法律よ」
「むちゃくちゃ悪用されそうな法律だな」
「というわけで、あの宝箱はわたくしが開けてくるわ。まあ、まかせておきなさい!」
「あ~、回り道で行っちゃった。こんな低い柵なんだから乗り越えちゃえばいいのに」

*******************

「はぁ、はぁ。あなたも、なかなか人が悪いわね。わたくしが30分もかけてたどり着いた宝箱に先回りして先に開けてしまうなんて」
「いや、どうみても柵乗り越えた方が早かったでしょ!」
「結局中身は何だったの?」
「ちょっとカピカピになったパンが1個」
「宝箱の中にカピカピのパンですって? 持ち主は何を考えてそんなことをしたのよ」
「そうだな~。たぶん、世界救世なんとかっていう法律を知った上での、御茶目なイタズラかもしんないね~。 笑えないけど。まあ、いちおうもらっておくかな」
「捨てておしまいなさい、そんなもの!」
「いやいや、何かの役に立つかもしれないだろ。」
「もう一個見つけたら、胸につけてビキニアーマーにでもするおつもりですか」
「そんなわけないだろ! それよりパラディン、あそこに誰か倒れているよ! どうしましたお嬢さん。大丈夫ですか」
「おなかがすいて、力が出ません・・・」
「あら、あなた魔法使いではなくて?」
「そ、そうですぅ~、一緒に冒険する仲間を探そうと毎日酒場にいたのですが、ついに飲み代がなくなって3日も何も食べてないのです」
「やっぱ冒険者ってバカだろ。しかたない、このかびかびのパンでよければどうぞ」
「あ、ありがとうございますぅ~。御礼に何か呪文をかけさせてください」